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葛藤と逡巡と妬みと嫉みと
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 その隧道を抜けると、現実に帰る事になるのは僕には判っていた。隧道を抜けた途端に今までの現実は夢となり、いずれ忘れてしまうことも。

 眩しい日差しの中、僕は一本道を歩いた。
 太陽の光を反射して白く光るコンクリートの舗道、鮮やかに輝く緑。白昼夢と呼ぶにはあまりにも鮮やかすぎた。
 でも僕はこの隧道を抜けて現実に帰らなければならなかった。帰りたくなかったが、身体が勝手に隧道に向かっていた。もの凄く暑かったが不思議と汗はかかなかった。うるさいほど蝉が鳴いていたが、不思議と不快ではなかった。むしろ静寂に包まれていく錯覚を覚えた。
 眩しく乱反射する舗道の向こうに隧道はあった。隧道の向こうはコントラストのはっきりした世界が横たわっていた。並んでいる自動車が僕たちを現実へと連れ戻す貨車のように見えた。





 暑さのせいなのか、何が現実で何が夢で、本当は何処に行きたくて、実は何処に向かっているのか判らなくなった。ここで時間が止まってくれれば良いとさえ思った。
 この隧道を越えてしまえば何もかも忘れてしまうような不安に駆られ、僕は精一杯の力を振り絞り、カメラを構え、シャッターを絞った。
 黒い暗箱からは、ミラーが上下する音だけが響いた。まるで夢の終わりを告げる号令のように。


Nikon D90+AF-S DX NIKKOR 16-85mm F3.5-5.6G ED VR

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男性
誕生日:
1972/11/25
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会社員
趣味:
多数
自己紹介:
 若い頃は転々と職を変え、一時は教習所の教官を経験するも、結局古巣の建設業に戻り、現場監督から、現在は設計者に。
 酒と煙草と家族と亀を愛するアラフォー万年平社員。

 そして職歴と同じようにブログも転々とし、三度地面の下から復活。殆ど時事ネタを書かない、情報としては全く価値のない私的な内容を送る、読んでも全くタメにならない、どーしよーもないこのブログへようこそ。

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