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葛藤と逡巡と妬みと嫉みと
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 そもそもの始まりは娘が朝ご飯が食べたいから炊いておいてと僕に言ったことからだった。
「おっしゃー、そんなら自分で弁当作って持って行くかー」
 と、よせば良いのに生まれて初めての自分で自分の弁当を作ろうと思い立ち、奥様と子供達が寝静まってからいそいそと準備を始めた。

 断って置くが、僕は料理が大の苦手である。
 中学生の頃、家庭科で習った焼きそばを自宅で実践してみたらラーメンになっていた程だ(汁がサラダ油なのね)。学校ではチャンと出来たのにね。おかしいね。
 他には野菜炒めがミネストローネになっていた事もあった(これも汁がサラダ油だったのね。つまり油敷きすぎ)。家庭科室じゃちゃんと野菜炒めになったのにね。不思議だね。世界の七不思議の一つだったよ。

 って、そのくらいの僕が作るのだ。今回はチャンとした準備が必要だった。冷蔵庫をチェックして、ベーコンを焼いたのと、出汁巻き卵を作ることに決定し、ベーコン焼くくらいは朝でいいから、出汁巻き卵を今夜中に作って置こうとインターネットでレシピをチェック。上手いことに四角いフライパンもあった。

 でもね。スクランブルエッグになっちゃったんだよね。
 甘ーい出汁の味するスクランブルエッグに。

 頭来て、かなり心が折れて弁当持って行く気分が全くと言っていいほど無くなったんだけど、さすがに料理した卵が勿体ないので、炊飯器にお米をセットしてふて腐れぎみに寝た。

 翌日、朝起きると、ちゃんとご飯が炊けていた。
 弁当箱を取り出して炊けたお米を弁当箱に詰めると、なんだかお米が柔らかい。おかしいな、ちゃんと3合分の水のラインにきっちり入れたのに。でもべちゃべちゃって訳じゃないから諦めて詰めて、昨日の出汁巻き卵、もとい、スクランブルエッグを弁当箱に詰めて、フライパンでベーコンを焼いた。僕の脳内ではベーコンはカリカリに焼ける予定だったんだけど、なんだかベチャベチャ。でも勿体ないので弁当箱に詰める。お米にゴマシオを振りかけて、さー完成。生まれて初めての自分で作ったお弁当。
 弁当箱を入れる袋を探したんだけど見当たらないのでそのまま弁当箱をリュックに詰め込んで会社に向かう。

 会社に着いて弁当箱を取り出すと、なんと弁当箱はひっくり返っていて、弁当箱の隙間からベーコンの油がダラダラでていた。なんてこった、リュックがめちゃくちゃベーコン臭いぞ。
 幸いリュックは防水になっているので濡れたタオルで拭いて何とかなったが、問題はお弁当。なんだか弁当箱自体にも汁がついていて、嫌な匂いが。食欲が失せる。

 それでもお昼になったらお腹がすいて、仕方がないので自分で作った弁当を食べる。

 うーん。
 美味しくない。
 僕はあまり食べ物を不味いとか思わないんだけど。ハッキリ言って美味しくない。ご飯もやっぱり軟らかい。でも勿体ないから全部食べる。スクランブルエッグは妙に甘いし、ベーコンも焦げていて炭の味がする。炭食った事無いけど。

 会社帰り。
 自分なりに反省して、明日ももう一度弁当を持って行こうと決心する。今日と同じ献立でリベンジだ。毎日自分で持って行けば昼弁当を買わない分だけ貯金が出来て、マック貯金も進むんじゃないか。いいぞ。頑張って不味くても自分で弁当を作って行こう。

 自宅へ着いて、シンクに溜まった洗い物を片付けて、弁当箱を洗って、米櫃に向かって「2合」のレバーを押す。
 すると普段なら「ザーッ」と音と共にお米がトレイに出てくるのだが、今回は「カラカラ」となんだか軽い音がして、トレイに出てきたお米は数十粒だった。

 あ。米がない。

 そうか、今朝のご飯が軟らかかったのは、お米が3合分出てなかったからなのか。
 僕はトレイに載った数十粒のお米を米櫃に戻して、食器棚からグラスを取り出し、焼酎をナミナミと注いで飲んだ。そして一息付きキッチンに呆然と立ち尽くした。外はしんしんと大粒の雪が降っていた。

 僕の夢は儚くも潰えた。

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誕生日:
1972/11/25
職業:
会社員
趣味:
多数
自己紹介:
 若い頃は転々と職を変え、一時は教習所の教官を経験するも、結局古巣の建設業に戻り、現場監督から、現在は設計者に。
 酒と煙草と家族と亀を愛するアラフォー万年平社員。

 そして職歴と同じようにブログも転々とし、三度地面の下から復活。殆ど時事ネタを書かない、情報としては全く価値のない私的な内容を送る、読んでも全くタメにならない、どーしよーもないこのブログへようこそ。

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